『 暑さの中で 』


猛暑、酷暑、記録更新 ―― 。
連日そんな言葉が飛び交っています。いつになったら治まってくれるのか、本当に「もう、いい」といいたくなります。
そんな中、日盛りに草とりをしたり、落葉を掃き集めたりする塾生がいます。
「今日は外での作業は止めなさい」といわれても、「はい」といい乍らやめません。
「こんな日に外で仕事して倒れても、“バカだ”といわれるだけだから。早く止めなさい」―― 。何度もいわれてやっとシブシブ止める姿に、本当は感謝しているんですが ―― 。
それにしても暑いですね。皆さまはどんな風にお過ごしなんでしょう。

今、塾の二階の稽古場からは、お三味線の音色と唄声が、聞こえて来ます。暑い中、浴衣姿で、顔をまっ赤にし乍らも笑顔をたやさずがんばっている女性たち。
当り前といえば当たり前なんですが、それでも「よくやってくれるな」と思います。
でも、昔の芸商人さんたちも暑い中、大きな荷物をかついで商いに歩いたはずです。

「町かどの藝能」の中に「風鈴売り」という商いがありますが、大きな屋台をかついで、IMG_0785
風鈴の涼やかな音色をひびかせながら、町の中を歩きます。
売り声は ――
  ふうーりん ふうーりん
     え ふうりん ふうりん
単純な唄詞(うたことば)ですが、実にのびやかで美しい節廻しです。とに角“涼”を売る商いですから、芸商人本人は決して暑そうな顔は出来ません。まして汗を見せるなど、もっての外(ほか)。どんなに暑くても涼しそうな顔で涼しい売り声をあげ、涼しい音色を聞かせながら商いに廻ります。そして、一寸した木蔭を見つけると荷を下し、気づかれぬようにそっと汗を拭い、一息入れると又、暑さなどどこ吹く風、涼しい声をあげて歩き出すのです。
そんな芸商人たちが行き交った京の町。
クーラーの吐き出す熱風も、コタツが町なかを走っているような車も無い時代、今よりはずっと涼しかったでしょう。
それでも大きな屋台をかついでの炎天下の商いは大変だったはずです。
昔の芸商人に想いをはせ乍ら、今日も稽古場は動いています。

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