『 雨 』


去る六月三日に近畿地方もつゆ入りしたようで、予報通りの曇りや雨の日が多くなりました。これから一ヶ月程、湿度の高いじめじめしたむし暑い日が続くのではないかと思うと、気分も滅入りがちです。
けれど、雨も亦いいもので、しとしと降るやさしい雨を受けて、色鮮やかに咲き匂う紫陽花には、安らぎを覚えます。
般若林の紫陽花も咲き始めて、しばらくたのしませてもらえます。

「つゆ」は「梅雨」とも、又「黴雨」とも書かれていますが、どちらもこの時期のことを、上手くいいあらわしているなあと思います。
もう一つ、「栗花落」と書いて、「つゆり」とよみます。つゆいりの頃に栗の花が落ちて実を結びはじめるからだそうで、事実「栗花落(つゆり)さん」という苗字もあるそうです。

私どもが公演活動している『町かどの藝能』の「蛇の目売り」の唄に、「数え上げれば百八つ・・・・・」と、雨の名前が沢山出て来ます。春、夏、秋、冬それぞれの季節に降る雨、降りそそぐ様子や人のくらしと結びつく雨、雨、雨 ―― 。
雨だけではなく、日本の言葉には状態や、意味、情景などを、きめ細かく、美しく、豊かに表わしているものが五万とあります。日本語はほんとうに素晴らしく、奥が深いと胸を熱くします。

今、十月公演の『町かどの藝能』(四十一)の稽古に入っていますが、湿度の高い日は三味線、太鼓の稽古はひかえなければなりません。たたくと皮がのびてしまうので。
数ある演目の一つ一つをよりきめ細かく研き上げていかなければならないので、初心を大切にしながら、稽古を積み重ねています。

むし暑く、不快指数の高い日もあろうかと思います。大切な御身体です。水分を十分に補給しておいとい下さい。

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