『素敵な たそがれ』


日暮れ前、めずらしく鶯が鳴いています。こんな季節はずれ(?)に
どうしてかなと思い乍らも、心たのしく耳を傾けています。おそらくお隣の塔頭 長得院様の林で鳴いているのでしょう。
たのしみは束の間、すぐにたそがれて来ました。正直なもので そうなるともう一声も啼いてくれません。また明日聞けるかどうか、でも久しぶりに美しいたそがれの一刻を プレゼントしてくれました。やはり般若林は恵まれたところです。
今から三十数年前、始めて般若林を目にした時は、荒れ果てた、外部の方の目には おそらく「幽霊屋敷」と映りそうな姿でした。木々は繁り放題、建物も今にも朽ち落ちそうです。でもその土地の広さ、豊かさ、手を入れられていないだけで 一生懸命磨けばきっと生まれ変るはずです。「なんとか ここをお借り出来ないものか」と、不安をいっぱいかかえ乍ら、長田先生につれていただいて伺いました。ところがなんと、ものの数分で「どうぞ」と快諾していただけたのです。きっと一瞬で長田先生のお人柄を見抜いて下さったのでしょう。本当に夢のような、今でも胸がドキドキする出会いでした。以来三十数年、本当に有難く、幸せな この上ない「場」に居させていただいています。「場」といいましたが、単に居るところという意味でなく、なんとも説明しがたい 今のはやり言葉でいえば「パワースポット」のようなところです。ながい間、何人も何十人も、もしかしたら何百人もの禅僧が学ばれ、巣立たれた修行の場です。そんなところに居させていただいているのですから、皆、もっともっと真剣に学び、修行せねば、「場」に叱られます。放り出されないよう、心を引き締めて 過ごして参ります。

六月十日、福井へ参ります。「町かどの藝能」の公演の為です。今は連日、その為の稽古に励んでいます。稽古場から絶えず声が、唄声や話している声が聞こえて来ます。
本当に幸せなこの頃です。

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