『 盛夏 』


真夏の午下がり ―― 。
あたりは森閑と静まり返っています。
暑さに耐え、何もかもがじっと息をひそめているようです。
蝉の声すら聞こえません。何か別世界にいるようで、ちょっと不思議な感覚です。
めずらしく稽古場も、今日は用う人も居ず、ひっそりと休息しているようで、「いつも有難う、こんなに静かなのは久しぶりね」―― 心の中でつぶやきました。
真夏の花の芙蓉もさすがにぐったりとしています。庭の緑もいつになく艶やかさがありません。「一雨、来ればいいのに ― 」―― そう思うと、俄かに水が恋しくなりました。
このところ、本当に雨が降りません。夕立すらしてくれません。「あぁ、一雨降って下さい」―― 昔の人の雨乞いほどの切実さはないにしても、本当にそう思います。
皆さまも暑い中、どのようにお過ごしでしょうか。やはりじっと耐えてられるのか ―― 。でも甲子園のことを思い出すと、とたんにシャキッとしました。
人間って本当に心の持ちよう一つでずい分変わりますね。グランドに立つ若者たちは勿論、応援席の人たちも皆、暑い中でも元気いっぱいです。「暑い暑い」とぼやいているとよけい暑くなります。
ここらで気分を換えて、夕暮れまでもうひとがんばりしましょう。

そう思ったら、少し涼しくなりました。

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