月別アーカイブ: 2017年5月

『 たそがれどき 』

雀たちが遊んで居ます。
相国寺様のお池のほとり。地面に降りたり樹の枝に止まったり、仲間とせわしなく飛び交って、とても楽しそうです。立ち止まってしばらく眺めていると、すぐ目の前の金網に一羽の雀がひょいと止まりました。本当に目と鼻の先です。すぐに飛び立って仲間の中へ戻りましたが、なんか自分も仲間に入れてもらえたようで嬉しくなりました。単純ですね。
相国寺様の境内は、そう大きくはありませんけれど、とても豊かなところです。小鳥や小さな動物たちの天国で、今日は久しぶりに鴛鴦の番にも逢えました。それぞれが、あっちへ行ったりこっちへ来たり、でも一寸すると又一緒になって泳いでいます。雀たちに気をとられていた間に、なんと、雄が石橋の上に立って羽づくろいをしているのです。「おしどりって歩けるの?」――
しばらくして自分の間の抜けた疑問に思わず笑ってしまいました。鴛鴦だって卵を産んで雛を育てなきゃならないんですから、歩けなくては困りますよね。
そんなこちらの自問自答に何の関わりもなく、彼は悠々と毛づくろいをしてはブルブルっと羽根をふるわせ、本当に気持ちよさそうです。それにしてもどうのようにして水から橋の上へ上がるのか、一寸不思議です。いつまでも見ているわけに行きませんからその場を離れましたが、どうにも気になって、帰って来てから簡単な辞書で調べて見ました。
なんと驚いたことに鴛鴦は「好んで高い木の洞の中に巣をつくる」のだそうです。水の中にいるイメージしか持っていなかった自分のあまりの無知さに、改めておかしくなりました ―― というより、自分が常に関心を持っていることにしか心を向けない己の貧しさに、ちょっぴり疼きを感じています。
相国寺様のお池は本当にいろんなことを教えてくれるところです。

上の稽古場から声出しの声が聞こえて来ます。おそらく「読み聞かせ」の稽古をする為でしょう。
いつ聞いても稽古場からの声は嬉しいものです。

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『 暮春 ― 若夏 』

般若林のお庭は今とても華やかです。白いさつき、紅いさつき、奥の方が紅色で、外側は白いさつき、いろんな「さつき」が一斉に咲き誇っています。
その足元にはシャガが、可憐な姿を見せています。「こでまり」も今まさに満開、つつじも負けじとがんばっています。杜若は成長が遅く、心細い葉をひょろひょろと伸ばしています。土がやせているのかずっと細いままで、一寸可哀想に思える様子です。
でも、おさだ塾創立者の長田先生が植えられた杜若ですので皆で大切に見守っています。
青もみじも爽やかな緑に輝いています。

相国寺様のお池の住人(?)が次々と入れ変っています。鷺が一向に姿を見せなくなり、代わって鴨が増えました。でもその鴨同志があまり仲良くないのか、時折り羽根をバタバタさせて蹴り合うような様子をみせたり、時には追い出されて逃げる鴨も居ます。のどかだったお池にも、その時々の変化によって、人間界並みのもめ事があるのでしょうか。
鴛鴦の番がこのところ姿を見せないのも一寸心配です。
そんな中でも亀たちはまわりの様子に関わりなく悠々と普段通りに石垣の間で休んでいます。
うれしいのは、蓮の花の大きな鉢が、今年も又満々と水をたたえて、池のまわりに並びました。池の中にも沢山の鉢が沈められています。夏になると毎年美しい花を咲かせてくれて、近隣に住む皆の大切な楽しみの場になっているのです。
中には遠くから、わざわざおいでになる方もあって、近くに住む私たちまで、一寸得意になれる季節です。

多くの方々にとってたのしい連休も、私たちのような仕事のものにはあまり関わりなく、あちこちのお休みの所の多さに不自由を感じるくらいです。でもこんな折りにこそと、基礎稽古や読みの課題に、そして秋の「町かどの藝能」の稽古に励んでいます。
今年は長田先生の生誕百年の節目の年でもあり、いっそう稽古に身が入ります。
公演は、十月十三日(金)・十四(土)・十五(日)です。
どうぞ皆さま、お揃いで是非々々おはこびいただけますように。心より、お願い申上げます。

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