午後から降り出した雨が、今も静かに降り続いています。
ゴボッ… ゴボッ… 建物と雨が作り出す規則正しい小さな水音が聞こえるだけで、時が止まってたように静かな般若林。今日は稽古も夜までなく、皆、それぞれに外廻りやチケット販売の為に出払っているのです。
こんな静かなひとときは ほんとに稀で、別の世界に来た感じです。久々の本格的な雨降りで、庭の木や草はぐんぐん水を吸いこみ、嬉んでいるのを感じます。「自然はえらいねぇ」とおっしゃった百四才の高僧のお言葉が折りにふれてよみがえって来ます。お天気続きでも雨つづきでも、一言の不足もいわず、全てを黙って受け入れて、自らの生命を全うする木や草たち。
夏の間、チラホラしか花を見せなかった萩が、このごろになって沢山の花をつけ、大きな草叢になっています。般若林に来た当初、何年間も少しも大きくならず 花もつけず、土が合わないのだろうかとずい分心配しました。それがここ二、三年で見違えるほど大きな草叢に成長し、少しずつ花をつけてくれるようになりました。きっと知らない土に植えかえられて しばらくは様子をみていたのでしょう。そしてやっと、ここが自分の生きる場所と、心を決めてくれたようです。これからは年々、沢山の美しい花をつけてくれるようになるでしょう。
外は未だ雨 ―― 。しばらくは止まないようです。