『春の公演まで』


春の雨が音もなく降っています。
「春雨じゃ、ぬれて行こう」 ―― ふと、そんな言葉を思い出し、思わず苦笑しました。今どき、こんな言葉を聞いて、合点して下さる方がどれくらいいらっしゃるでしょう。
時の流れは昔より随分早くなっているように感じますが、実際の時の流れは少しも変わりません。只世の中の物ごとが、次から次へ起こっては過去へ、起こっては過去へと忘れ去られていくだけ ―― 。
でも、わすれてはいけないことも沢山あります。この国に生きる一人として、よくよく見極めなければならないことも多々あります。でも報道は、その時その時の人の気持ちによって、民衆の関心の多寡によって、けっこう「忘れさせられる」ようなことも起こって来ます。時には「これは忘れてはいけない事だよ」と、関心を喚起してくれるような報道もあっていいのではないかと思うのですが、なかなかそのようにはなりません。尤も、報道によって民意を誘導するようなことは絶対してはならないのですから、そこは国民の側が、かしこく見極めるべきなのでしょう。
なんだか春雨に、似つかわしくない無粋な話になりました。

春の公演の稽古は、着々と ―― とはいかないようで、ノツコツ、ノツコツ、無器用にあちこちにぶち当り乍ら、それでも少しずつは前進しているようです。もう日数も余すところわずかですから、もっともっとペースを上げて、濃い内容の稽古をしていかなければならない段階なのですが、どうもそうはいっていないようです。不器用な人間は、他の人の何倍も稽古をしなければ上がって行きません。うちの場合は全員が不器用なのですから、みんなして「懸命」に「必死」になってくれないと上がりません。尤も稽古だけして居ればいいのではなく、塾全体のいろんな仕事もしなければなりませんから、俳優もスタッフも大変です。
それでも自分たちの本拠地で公演が持てるおさだ塾は最高に恵まれています。稽古場の確保に苦労している劇団が、ほとんどなんですから。
今日の土台を築いてくれた先輩たちに感謝して、全力で稽古に打ち込むことこそが、それに応える道でしょう。努力して苦労して、その結果お客様の拍手をいただけるのは「俳優自身」なのですから。
ここからは怪我なく、事故なく、全員が元気で当日に向かって邁進して、最高の状態で本番を迎えることこそ、お客様への唯一の感謝の証といえましょう。
がんばりましょう、ゴールまであとわずかです!!