おさだ新聞

『たそがれどきに』

暮れなずむ相国寺様の境内を歩くと、いろんなことに出会う。 六時台ともなると、家路を急ぐ人たちがせわしなく境内を通り抜けて行く。さしずめ、東門と西門を結ぶ石だたみの路が幹線道路。烏丸通りの信号が変わったのだろう、いっせいに何台もの自転車が流れ込んで来る。子供を前後に乗せているお母さん、買物を前カゴに乗せている主婦らしき人、学生、生徒、サラリーマン、いろんな人がいる。時折り、三台が並んで大きな声でしゃ…
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『 ほんとうの勇気 』

人は誰しも、他人に悪く思われたくないという気持がある。他人との関わりあいの中で生きているのだから当然のことであろう。 しかし、時として、自分が悪く思われても言わなければならないこと、しなければならないこともある。 ある御婦人の母上が、病気で入院なさっていた。手術をされて一ヶ月余り経った時、担当の若い医師が「来週から入浴してもらいますが、週に一回しかいけません」といった。 医師の言葉にひっかかるもの…
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『 地蔵盆 』

きのうまで、京のあちこちに見られた「地蔵盆」の行事。 各町内毎に、子供を楽しませる映画や花火、時にはマジックなど、いろいろと趣向をこらして行われる。本来の宗教行事としての色は薄くなっているとはいえ、子供たちにとっては一寸いつもとは違うハレの日である。 夏休みが間もなく終わることを改めて思い出し、出来ていない宿題に「どうしよう」と思うのもこの頃である。残りわずかな夏休みの最後の「遊び」の時、お地蔵様…
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『 やがて八月 』

七月の京都は祇園祭一色にぬりつぶされる。鉾町以外の方々にとってはかかわりない事だろうが、それでも街中が祭礼の雰囲気になるのは、これも又、伝統の力だろうか。 そして八月。子供たちにとっては何よりもうれしい夏休みである。甲子園では今年も又、高校球児たちの熱い戦いがくりひろげられ、沢山の涙と感動を日本中に与えてくれるだろう。 又、津軽平野のねぶた祭り、山形の花笠踊り、阿波踊りなど、各地で夏祭りが華やかに…
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『ラジオ放送今昔』

少し古い話をしよう。 戦後、日本が復興の歩みを一段と強くしていったころ。マス・メディアは新聞とラジオだけだった。 ラジオといってもNHKだけ。大阪BKは今年開局九十周年、京都OKは今月二十四日で八十三周年を迎えた。 そして昭和二十六年、民放が新たにスタートした。何分、ほとんど経験のない人間が、未知の事業に立ち向かったのだから、それこそテンヤワンヤであった。まして重役たちは現場の事など全く御存知ない…
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NHKの朝のドラマ

四月からはじまったNHKの朝のドラマに、輪島塗りのことが取り上げられている。 かつて、ある輪島塗りの職人さんに、テレビのアナウンサーが質問していた。 「とても質素な生活をなさっているようですが、せいたくをしたいと思われたことはありませんか」―― 。 アナウンサーの不思議そうな質問に、その職人さんはボソッと答えられた。 「ぜいたくいわれても、したことがないから、わからん―― 。 何の気負いもてらいも…
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ほんものの味を

今回は、町かどの藝能十周年記念誌に、創設者長田純先生が記載されました文章をご紹介致します。 「おにぎり」や「おむすび」が今日商品になって街中で売られている。 けれど、どれもこれも皆「おにぎり」で「おむすび」ではない。 日本中のそれを食べたわけではないが、商品としてとても「おむすび」は出来ないだろうと思う。 「おむすび」とは『結び』であって、ただ、「にぎっ」てかためたものとは違うのだ。だから「おむす…
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まもなく、春です。

春爛漫というには未だ少し早いが、木々の梢は緑に燃え立ち、桜たちはいつ開こうかとその時を待っている。 こうした自然界の春と共に、人間界の若者たちも、いよいよ社会人としての第一歩をふみ出そうとしている。胸いっぱいの希望をもって。 又、企業の方でも、若い新しい戦力の参加に大きな期待を寄せている。 希望と期待。実にいい関係である。 ところがそれが、ものの二・三ヶ月も経つと、「面接の時は明るくてハキハキして…
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聖天子

「鼓腹撃攘」という言葉がある。 古代中国の伝説上の聖天子、堯にまつわる物語で、人々が不安なく太平を楽しみ、満ち足りて暮すさまをいった言葉である。 堯は帝位につくと、ひたすら天を敬い人を愛し、民を慈しむ善政を行った。お陰で世の中は平和に治まり、穏やかな日々が続いた。 或る時、堯は「誰も何もいわないが、本当に世の中はちゃんと治まっているのだろうか」と、ふと不安になり、自分の眼で確かめようと、そっと町へ…
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2月

久佐伎波里月(くさきはりづき)、萌揺月(きさゆらぎづき)、衣更着月(きぬさらぎづき)、気更来月(きさらぎづき)、如月(じょげつ)ーー。 2月の異名は、いろいろありますが、「梅見月」のような、庶民にも馴染みのある名もあります。 寒中から健気に咲く梅を愛でる心は古く、万葉の頃の「花」といえば梅でした。華やかな宮廷文化の生まれた平安の頃から、次第に桜へと移って行きましたが、今も尚、梅を愛する人は多くおい…
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