まぶしい初夏の日差しに銀鱗をきらめかせて、山間の清流に遊ぶ若鮎の姿。優雅でさえあるその姿は、美しい季節の風物詩である。
鮎は前年の冬、川で孵化するとすぐに海へ下る。そして冬を海で過し、翌春三・四月ごろ、水がぬるみはじめると待っていたように川を遡って来る。天敵や公害や、さまざまな障害にはばまれながら、それでも懸命に生まれ故郷の川へ還って来るのである。そしてふるさとの川で一夏を過し、秋、産卵を終えると再び海へ下って行く。
多くは一年で生命を終えるが故に、年魚とも呼ばれる鮎は、薄命の魚故にその一刻(ひととき)の生を最高に美しく、燃焼して生きるのであろうか。
そういえば【あゆ】の語源とされる「零(あ)ゆる」は、脆き生命の意という。
又、鮎という字は本来「なまず」を指し、「あゆ」ではないという。「あゆ」と「なまず」 ― これほど姿形の違う魚も珍らしい。それが何故、「鮎 =あゆ」になったのか。
一説によると神功皇后が【あゆ】を釣り、戦の勝敗を占ったところから「占魚= 鮎 = あゆ」になった(和訓栞)とか、又、鮎(ねん)は年(ねん)に音が通ずる故(東雅)とする説など、さまざまである。
例年のことながら長雨が続くと川は増水する。集中豪雨ともなれば荒れ狂う濁流となって、谷を、野を、町をかけ下る。
この時、鮎たちは狭い岩陰に身を潜め、お腹をぴったりとつけて流されまいと必死に耐え忍ぶ。生への本能とはいえ、あの細い身体で激流にさからうのはどれほど苦しいことか。
六月一日には多くの河川で鮎漁が解禁となる。長雨と共に鮎たちにとっては苦難の季節となる。
釣り人たちよ、どうか戯れに生命をもてあそび給う勿れ。あらゆる生命に、愛と感謝を捧げて ― 。
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