冬がれのさなかに、あざやかな赤い実をつけてくれる南天の木。
植物学的にいうとメギ科、ナンテン属の常緑低木。
驚いたことに、世界中でナンテン属というのはこの一種だけで、和名のナンテンがそのまま学名になっている。だから世界中どこでもナンテンで通るというのだ。正しくは「南天竺」、「南天燭」、「南天竹」などと書くが、「竺」は天竺(インド)から渡来した事を意味する。「燭」、「竹」は漢名で、「燭」は円錐状の花穂の形からというが、赤い花木の少ない冬の南天は、まさに冬の灯火・燭台のように思える。
又、南天の音(ナンテン)が、難転に通じるところから、縁起のよい木としていろいろに用いられる。それも慶事にも仏事にも使えるというからはなはだ都合が良い。
お赤飯などを贈る時にも、必ず南天の葉が添えられているのもその一例であろう。但しその時、気をつけなければならないのは葉の数で、三・五の奇数でなければならない。
又、慶びごとの時は葉の表を上にし、仏事の時は裏を上にして置く。こんな一寸した事も、知っておくと何かの役に立つものだ。
お正月の床に飾る生花に南天が欠かせないというのも、ナンテンの縁起からであろうか。
間もなく迎える新たな年、少しでもおだやかな年であることを切に願おう。