月別アーカイブ: 2015年11月

『ほんものの味を』

おにぎりやおむすびが今日商品になって街中で売られている。けれど、どれもこれも皆「おにぎり」で「おむすび」ではない。日本中のそれを食べたわけではないが、商品としてとても「おむすび」は出来ないだろうと思う。
おむすびとは結びであって、ただ、にぎってかためたものとは違うのだ。だからおむすびは、両掌の中でくる、くるとまわして、御飯つぶがお互いにしっかり結び合うように「まわしにぎり」するものなのである。
御飯と御飯がしっかり結びあってはじめて、お米の ― 御飯の甘さ、おいしさが生まれてくるのだ。それを、手塩にかけ、食べる人に心を寄せかけてむすぶのである。これではじめて、心づくしのおむすびの味が生まれてくるのだ。
このおむすびにする御飯 ― お米を、藁で炊きあげたら、これこそ今日なら最高の贅沢になるのかもしれぬ。併し、昔は、これが普通だった。
ガスや電気で炊くのは便利に違いないが、それではほんもののお米の味は生きて来ない。一度機会があれば、藁炊きの御飯やおむすびを召し上がって、ほんとうのお米の味 ― ほんものの味を味わっていただきたいと思う。
藁と云えば、鰹のたたきも藁火であぶり焼きしないと、ほんとうのたたきの味はないという。
藁が身を燃やして、魚の不要な匂いをとってしまうのである。流石、藁はお米の母、身を焼いてまで役に立とうとしてくれる。人はそれを「藁の匂いつけ」というが ― 。
「町かどの藝能」は藁であり、藁炊きのおむすびである。一つ一つは小さいかもしれぬが、ほんものばかりである。いつか一度は味わっていただきたい。

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『このごろ』2

般若林の庭が色づきはじめました。DSC_0588
萩も黄色くなった葉をふさふさと延ばしています。
大きなカリンの木も黄葉し、時折り大きな黄色い実を落とします。うっかり木の下に車を置いているとボコンと屋根がへこみます。木の下に幾つか黄色い実がころがっています。とても香りがよく、ホワイト・リカーにつけると、喉にもよい美味しいカリン酒が出来ます。今は忙しいのと、とても実が固いので、作れずにいます。よろしければ塾へ来られてお持ち帰り下さったら、カリンの為にも嬉しいのですが ―― 。
山茶花も紅い花を沢山つけています。又、玄関脇の千両が、例年になく美しい赤い実をいっぱいつけています。白い小菊も咲いて、般若林はとても素敵なところです。
気候のせいか、楓の紅葉は未だですが、そのうちにあざやかに染め上がるでしょう。
種々と多忙な日々も、自然に一寸目をやるだけで、ほっと心が安らぎます。
十一月二十八まであとしばらく。ラスト・スパートの日々です。

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『このごろ』

日に日に秋も深まり、紅葉の便りもあちこちから届きはじめました。北の国では初雪、初冠雪の季節です。
般若林の庭の紅葉は未だ少し先、そのうちに赤・黄・朱・茶・樺、さまざまな色彩に染まります。干し柿
とはいえ、シデの紅葉はすでに始まっていますが ―― 。
そうそ、それに塾生の出入りする西入口の軒先に、渋い赤茶色の干し柿が吊り下げられています。裏庭の柿の木の恵みです。
以前にも何度か干し柿を作ろうとしたのですが、その都度ヒヨやカラスに食べられて、塾生たちの口には入りませんでした。鳥たちはとても利口で、実のなるものはいつも一番いい食べ頃に、ちゃんとついばんで食べてしまいます。「明日、丁度食べられると思っていたのに ―― 」と、いつも塾生たちがくやしがっていました。干し柿も例にもれず、いつも早々に食べられてしまいます。それでしばらくは止めていたのですが、何と思ってか、今年又、作りはじめたのです。そんな干し柿なのですが、今のところ大丈夫なようです。干す場所を南側から西側に変えたからでしょうか、鳥たちに見つかることもなく、柿たちは毎日のん気な顔でぶら下がっています。塾生の口に入る日も近いでしょう。

ところで塾生の多くは今、十一月二十八日の「京ことば講座」での京ことばのドラマに悪戦苦闘、首を上下にふったり、横にふったり、まるで人形芝居のようで見ているとおかしくなります。でもそのうちに言葉が身につくと徐々に人物の心をとらえて行きます。さしずめ今は過渡期でしょうか。
又、例年のクリスマス近くの「小さな発表会」、日どりが決まりました。
「十二月十九日(土)午後三時から五時まで」の予定です。
自分たちでやる中味を決め、自分たちだけで稽古をし、ごく近しい方々に見ていただく小さな小さな発表会です。大きな顔をして「おこし下さい」とはいえない未熟な発表会ですが、もしよろしければおこし下さい。

いつも自然に恵まれた般若林ですが、今はあまりそれを楽しむ余裕は無さそうです。でも本当はどんな時でも、いえ、そんな時ほど、自然に目を向ける心のゆとりがほしいのですが ―― 。
お忙しい皆さま方も、時には空の青さに、又澄んだ夜空に浮かぶお月さまの光に、心をお寄せになってみては如何でしょう。

 

 

 

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イラストレーターの谷本聡美様からこんな可愛いい絵葉書を戴きました。
「心からの感謝を込めて」の一文を添えられて ―― 。

挿絵

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