月別アーカイブ: 2016年6月

「季の魚」

まぶしい初夏の日差しに銀鱗をきらめかせて、山間の清流に遊ぶ若鮎の姿。優雅でさえあるその姿は、美しい季節の風物詩である。
鮎は前年の冬、川で孵化するとすぐに海へ下る。そして冬を海で過し、翌春三・四月ごろ、水がぬるみはじめると待っていたように川を遡って来る。天敵や公害や、さまざまな障害にはばまれながら、それでも懸命に生まれ故郷の川へ還って来るのである。そしてふるさとの川で一夏を過し、秋、産卵を終えると再び海へ下って行く。
多くは一年で生命を終えるが故に、年魚とも呼ばれる鮎は、薄命の魚故にその一刻(ひととき)の生を最高に美しく、燃焼して生きるのであろうか。
そういえば【あゆ】の語源とされる「零(あ)ゆる」は、脆き生命の意という。
又、鮎という字は本来「なまず」を指し、「あゆ」ではないという。「あゆ」と「なまず」 ― これほど姿形の違う魚も珍らしい。それが何故、「鮎 =あゆ」になったのか。
一説によると神功皇后が【あゆ】を釣り、戦の勝敗を占ったところから「占魚= 鮎 = あゆ」になった(和訓栞)とか、又、鮎(ねん)は年(ねん)に音が通ずる故(東雅)とする説など、さまざまである。
例年のことながら長雨が続くと川は増水する。集中豪雨ともなれば荒れ狂う濁流となって、谷を、野を、町をかけ下る。
この時、鮎たちは狭い岩陰に身を潜め、お腹をぴったりとつけて流されまいと必死に耐え忍ぶ。生への本能とはいえ、あの細い身体で激流にさからうのはどれほど苦しいことか。
六月一日には多くの河川で鮎漁が解禁となる。長雨と共に鮎たちにとっては苦難の季節となる。
釣り人たちよ、どうか戯れに生命をもてあそび給う勿れ。あらゆる生命に、愛と感謝を捧げて ― 。

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「京ことば」は心和む

去る五月二十八日(土) 佛教大学四条センターでの「京ことばをたのしもう」講座第一回は、おかげさまで無事に終えることが出来ました。出席率も高く、ほぼ満席で有難いことだと、感謝して居ります。
受講生の中に、昨年十一月のプレ「京ことばをたのしもう」に出席された方や、一昨年まで四年続きました「絵本の読みきかせをたのしもう」講座に来て下さった方々も来られてなつかしく嬉しく思いました。

受講生の方々は、京ことばの誕生から歴史、京都人の情(こころ)を育て上げた趣ある奥の深い内容に熱心に筆をとられ、京ことばをテーマにした小さなドラマには、軽い笑い声をあげられて、たのしんでられました。「次も必ず」と沢山の方からお声をかけていただき、又 センターの方にも「皆さんいいお顔で帰って下さって、本当によかったです」と喜んでいただきました。心をゆるめず引き締めて、七月の第二回、九月の第三回に臨んでいこうと思っています。

前回に書きましたが
六月一日より、『町かどの藝能』の一般参加募集を始めました。
十五才から三十五才までの健康な男女若干名です。
おさだ塾のプロの俳優と一緒に、江戸時代の京の都の芸商人として、四ヶ月間稽古を積み重ねて十月の公演に参加していただくのです。
指導料はいただきません。
六月三十日の締切までに 履歴書に写真を添えて おさだ塾へお送り下さい
※送り先は、ホームページの[問い合わせ]を御参照下さい
お問い合わせがあれば、くわしくお話します。
貴重な体験です。
人として心やさしく豊かになります。
人生への歩みに自信がもてます。
どうぞ臆せずお問い合わせ下さい。

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『 境内にて 』

相国寺様の池に 蓮の花が咲きました。久しぶりに訪れたので、とてもうれしく、なつかしく、季節の推移が変わりなく動いているのを感じました。
白い花ばかりでしたが、蕾の先にほんのり紅ののぞく蓮がいくつかありましたから、このページを御らんいただくころにはきっと紅の蓮も咲いてくれているでしょう。

塔頭の植えこみのそばでしゃがみこんでいる少女をみかけました。高校生でしょうか、制服のような清楚な姿です。何をしているのかと思って声をかけますと「ウラジオストックというところでされるんですけど、舞台に落ち葉を撒きたいというので、それを集めています」―― 。悪い事を見つかったかのようにおずおずと、伏目がちに答えてくれました。
友人か 先輩か 先生か、兎に角誰かが 舞台でやる仕事の手伝いをしてあげているのでしょう。塔頭の側はけっこう掃除が行き届いているので、それほど落葉は多くありません。それを丹念に、ぽつぽつとひろい集めているいじらしい姿に心惹かれました。
「うちに来ればひょっとすると掃き集めた落葉が沢山あるかも知れない」と思いつき、戻った時にはもう少女の姿はありませんでした。
ひょっとして妖精?― と思わされるような不思議な出会いでした。

相国寺様の境内は、やはり魅力的なところです。

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