投稿者「おさだ塾」のアーカイブ

『京都の山』

京都の北東にそびえる比叡山。そして北西には愛宕山。京都はこの二つの山に守られて、長く王城の地として栄えて来た。
比叡山の中腹に位置する延暦寺は天台宗の総本山であり、「行」と「教学」の修行道場として、今も篤い尊崇の念をあつめている。中でも千日回峰行は汎く知られるところであり、十二年の間、山を降りない籠山行や、教修生を育てる行と教学の実践の場でもある。
伝教大師最澄によって、法華・天台・密教などを融合させた新しい日本の天台宗を確立した延暦寺には、今も千年の法灯が消えることなく守りつがれている。
西の愛宕山は高さでは比叡山に勝る(九二四メートル)
「愛宕」という名稱は、その地で一番最初に朝陽の当る場所を意味するそうで、そういえば各地に愛宕という山がある。
京都の愛宕山は山頂に愛宕神社があり、一般に火伏の神社として知られている。
本宮には伊邪那美命(イザナミノミコト)、そして若宮には雷神(イカヅチノミコト)が祀られている。
七月三十一日の夜には、「火迺要愼」と書かれた火伏せのお札をいただきに、多くの人が山に登る。真っ暗な山に、登山する人たちの灯火が列となって美しい。
戦時中の十二月八日には強い体と精神を養う為と、多くの児童が、愛宕登山をさせられた。
いずれも、京都に生まれ育った者には、なんらかの想い出を持たしてくれた東と西の山である。
申年の年頭、気候はおだやかであったが、世界中どこもが、ざわざわとした幕開けであった。
「動かざること山の如し」といわれるが、たしかに山は変わることなく黙って我々を見守ってくれている。東西の二つの山の他はいずれも標高が低く、「丘」だという人もある。ともあれ、いつ見ても思うのだが、京都の山は本当に美しい。なだらかで、穏やかで、いつどこにいても、ちょっと歩けば必ずどちらかに山が見える。本当に恵まれた、有難い地だと思う。
京都生まれの人間の、ひとりよがりといわれるかも知れないが、自然災害もたしかに少ない。今年も「やっぱり京都はいい」といえる年であってくれることを願おう。

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『草藁生活行』

例年より遅い初雪に、冬枯れの庭木もちょっと寒そうな風情です。

二月十一日の建国記念日は、おさだ塾にとってとても大切な年中行事の一つ、「草藁生活行」があります。但し、建国記念日だからではなく、年間で一番寒さが厳しい時期だからです。
この行事は、四十年以上も前から一度も欠かすことなく続いています。最初の頃はマラソン大会で、上賀茂神社から奥貴船までの街道を走りました。でも「町かどの藝能」を始めてからは草鞋履きで歩くことに切り換えました。
この日、おさだ塾の俳優たちは「町かどの藝能」に生きる芸商人として、「お命」を預かった役の人物と二人連れで歩きます。IMG_0980
風のつめたさや、雲間から覗く陽のわずかな温もり、路傍の草木のたくましい生命力を感じ乍ら ―― 、時には江戸時代の芸商人たちが、自然とどう向き合ってくらしていたのだろうかと思いを馳せながら ――。
昔の人の、そして芸商人たちのくらしに少しでも触れる体現をしながら歩くのです。

歩き終わった後、料理旅館「ひろ文」さんの温かいお風呂で汗と埃を流し、それから一人一人、昨年一年間の反省と今年の目標や抱負を発表して、一年の精進を誓います。
ですからこの日は、ある意味おさだ塾の正月元旦ともいえましょう。その後、美味しいお料理をいただき楽しいひと時を過ごします。
この席には、夢素美会(おさだ塾の友の会)の方や、いつもたすけて下さる方々もご出席くださり、その方々に何か勉強したこと(お話やエチュードなど)を発表し、たのしんでいただきます。

これからも塾の在る限り続けてまいります。
皆様にも御参加いただけるとより嬉しいのですが ―― 。
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『嬉しいこと』

漸く冬将軍の到来でいつもの冬らしい気候になりました。

毎年、塾友の樋上さんが、その年の干支十二支の絵を色紙に画いて届けて下さいます。IMG_0964
今年も素晴らしい猿の姿を描いて届けて下さいました。年末の忙しい時にもかかわらず、いつも大晦日に必ず届けて下さいます。それも、数十年欠かすことなく続けてくださっています。本当に有難いことと感謝しております。

又、先日、ちょっと嬉しいことが有りました。
それは、華頂短期大学付属幼稚園の教頭先生からの「町かどの藝能」の公演依頼です。
先生は十年以上前に、秋の「町かどの藝能」の公演を御覧くださり、いつか機会があれば園児達にも見せてあげたいと、ずっと企画を温めて下さっていたとの事でした。
本当に有難く嬉しい事です。
二月六日に幼稚園での公演が決定しました。先生のお心にお応え出来るように、また園の子供さん達にも喜んで楽しんでもらえる公演にしたいと思っています。

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平成二十八丙申歳 正月

あけまして
おめでとうございます

平成二十八丙申歳 正月

申という字には「伸びる」の意味があるとのこと、一同ますますより上をめざして努力致します。
何卒よろしく御指導、御鞭撻たまわりますように。
あたたかな新春ではございますが、どうぞお健やかにお過ごし下さいませ。

春の小さな劇場は三月二十五日(金)・二十六日(土)・二十七日(日)の三日間、公演を持ちます。内容などはあらためておしらせいたします。
御一人でも多くの方々のお越しをお待ち致して居ります。

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『南天』

冬がれのさなかに、あざやかな赤い実をつけてくれる南天の木。
植物学的にいうとメギ科、ナンテン属の常緑低木。
驚いたことに、世界中でナンテン属というのはこの一種だけで、和名のナンテンがそのまま学名になっている。だから世界中どこでもナンテンで通るというのだ。正しくは「南天竺」、「南天燭」、「南天竹」などと書くが、「竺」は天竺(インド)から渡来した事を意味する。「燭」、「竹」は漢名で、「燭」は円錐状の花穂の形からというが、赤い花木の少ない冬の南天は、まさに冬の灯火・燭台のように思える。
又、南天の音(ナンテン)が、難転に通じるところから、縁起のよい木としていろいろに用いられる。それも慶事にも仏事にも使えるというからはなはだ都合が良い。
お赤飯などを贈る時にも、必ず南天の葉が添えられているのもその一例であろう。但しその時、気をつけなければならないのは葉の数で、三・五の奇数でなければならない。
又、慶びごとの時は葉の表を上にし、仏事の時は裏を上にして置く。こんな一寸した事も、知っておくと何かの役に立つものだ。
お正月の床に飾る生花に南天が欠かせないというのも、ナンテンの縁起からであろうか。

間もなく迎える新たな年、少しでもおだやかな年であることを切に願おう。

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『小さな発表会の御礼』

十二月十九日の「小さな発表会」、なんとか無事終わりました。
いつもおこし下さる方や初めての方、どなたも好意的に見て下さる方ばかりで、本当に有難いことでした。
心より御礼申し上げます。
「仕事に大小は有っても軽重は無い」というのが長田先生の教えでした。それにしては準備期間も稽古のふみ込みも本当に少なく、心苦しい事の多い発表会でした。でも俳優たちは皆清々しい顔で、出来はどうあれ、「やった」事の喜びを感じているようでした。それもうちの俳優の特性でしょうか。

般若林の庭の梢も大分淋しくなりました。ただ今年は紅葉が遅く、散りおくれた枯葉がかなりのこっています。いつもは美しい彩のじゅうたんになる落葉ですが、今年は赤茶けた枯れた葉っぱが散らばっています。
山茶花もあらかた花を無くしました。
代わって椿が、赤い花や白、淡紅の可愛い花を沢山つけています。
千両もしっかり赤い実をつけてがんばっています。楓やカリンの落葉で淋しくなったと思っていた般若林の庭ですが、見廻せば又、次の季節の花が咲いてくれています。間もなく来る冷い冬も楽しく過ごせそうで、恵まれた自然の有難さをしみじみかみしめています。

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『稽古発表会』

『事始め』もすみ、京都の町も新年を迎える支度にとりかかり始め、歳の瀬が感じられる今日此頃です。 おさだ塾は只今、年末恒例の「小さな発表会」の稽古の追い込みに入っています。併し、稽古期間中 半ばで、いつものような活気溢れる盛り上がりが感じられない状態が続きました。 原因は風邪です。塾生が次々と風邪をひき、稽古場は一時、開店休業の有様でした。全くお恥かしいことでした。 おさだ塾では、創立以来、風邪をひいたり、腹痛を起こしたり、又不注意で怪我をした場合「罰金」を払うことになっています。塾が決めた事ではなく、塾生たちが「健康管理が出来ていなかった」と己を戒めるために進んで始めた事なのです。 「罰金」は、自分が「痛い!」と思う精一杯高い金額でお菓子や果物を買って来るのです。 風邪をひいていない塾生たちは、先輩、後輩問わず、「本当なら溝へ投げ捨てたい処だが、食べてやろう」と口に入れます。 塾生たちの健康は回復して来ましたが「発表会」は皆様にお楽しみいただけますかどうか ―― 。塾生たちには精一杯力を発揮してほしいと念うばかりです。 発表会は来る十二月十九日(土)、午後三時より五時までおさだ塾の稽古場で行います。無料です。お問い合わせは 075-211-0138 です。是非お越し下さい。

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恒例の稽古発表会のお知らせ

恒例の稽古発表会のお知らせ
般若林の稽古場で、稽古の発表会を致します。
朗読・落語・絵本の読み聞かせ・民話の語り・創作短編劇等盛りだくさんでございます。
入場無料で、どなたでもお越しいただけます。
御近所の方、演劇に興味をお持ちの方、どんな稽古場か見てみようと思われる方
お待ちいたして居ります。

日時 12月 19日(土)
午後3時~5時

場所 おさだ塾 稽古場 二階
住所 ホームページの地図をご覧ください

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『師走になって』

十二月に入って何となく薄ら寒い日が続いています。でも又少しするとあたたかい日が有るとか、あまり気温に神経を立てない方がいいようです。

十一月二十八日のプレ「京ことばをたのしもう」講座、お蔭さまで無事終わりました。
沢山の方が、それも「新しい方が来て下さった」と四条センターの方に喜んでいただきました。いつも乍ら皆さんいい受講生ばかり、とてもあたたかく、親近感をもって聞いて下さいました。
小さな「京ことばのドラマ」も、又KBSさんで放送して来た京ことばキャンペーンのCDも、とても喜んで下さり、五月からの講座ではもっと多く聞いて、見て、たのしんでいただこうと思っています。
「皆さん、いい顔をして帰って下さいました」とのセンターの方の言葉は、何よりもうれしく有難いことでした。
京ことばに悪戦苦闘した塾生たちも、ほっとした顔で、中には「今度ほどくり返して稽古したことはなかった」などと、俳優らしからぬ感想をいう人もいました。
私たちの仕事は人さまに喜んでいただくこと、一つおえるごとに幸せを感じます。
今は十九日の発表会に向けて、いろいろと考え、行動していることと思いますが ―― 顔を見ているとけっこうのんびりしているので、こちらの方がいささか不安です。

般若林の庭も少し淋しくなりました。
萩は葉を落として、細い長い枝だけになっています。以前は見事だった銀杏も、数年前にすっかり枝を伐られてからは、小さく目立たなくなってしまいました。
山茶花は、赤や淡紅の花は咲きましたが、白い花が今年は咲いてくれませんでした。少し心配です。楓の紅葉は木によって、日当りによってでしょうか、美しく紅葉している木もあれば、ほとんど変わっていない木もあります。
夏の間、他の木の下の土は乾いていても、いつもそこだけは黒くしめっていたろうばいの木も少し元気がありません。甲賀市様からいただいた大切な木ですので、斉藤さんがいつもこまめに水をやっていてくれたのですが ―― 。
今、一番元気なのは南天でしょうか。赤い実をしっかりつけています。以前はヒヨがよく食べに来て、「全部は食べないで」と思ったほどですのに、近頃はどうしたわけかやって来ません。これもいささか心配です。
間もなく冬枯れの季節になりますが、又その頃にはそれなりの般若林便りを差し上げましょう。
年末を控えて、いろいろとあわただしくすごされるでしょうが、どうぞお元気で ―― 。

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『ほんものの味を』

おにぎりやおむすびが今日商品になって街中で売られている。けれど、どれもこれも皆「おにぎり」で「おむすび」ではない。日本中のそれを食べたわけではないが、商品としてとても「おむすび」は出来ないだろうと思う。
おむすびとは結びであって、ただ、にぎってかためたものとは違うのだ。だからおむすびは、両掌の中でくる、くるとまわして、御飯つぶがお互いにしっかり結び合うように「まわしにぎり」するものなのである。
御飯と御飯がしっかり結びあってはじめて、お米の ― 御飯の甘さ、おいしさが生まれてくるのだ。それを、手塩にかけ、食べる人に心を寄せかけてむすぶのである。これではじめて、心づくしのおむすびの味が生まれてくるのだ。
このおむすびにする御飯 ― お米を、藁で炊きあげたら、これこそ今日なら最高の贅沢になるのかもしれぬ。併し、昔は、これが普通だった。
ガスや電気で炊くのは便利に違いないが、それではほんもののお米の味は生きて来ない。一度機会があれば、藁炊きの御飯やおむすびを召し上がって、ほんとうのお米の味 ― ほんものの味を味わっていただきたいと思う。
藁と云えば、鰹のたたきも藁火であぶり焼きしないと、ほんとうのたたきの味はないという。
藁が身を燃やして、魚の不要な匂いをとってしまうのである。流石、藁はお米の母、身を焼いてまで役に立とうとしてくれる。人はそれを「藁の匂いつけ」というが ― 。
「町かどの藝能」は藁であり、藁炊きのおむすびである。一つ一つは小さいかもしれぬが、ほんものばかりである。いつか一度は味わっていただきたい。

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