『ほんものの味を』

おにぎりやおむすびが今日商品になって街中で売られている。けれど、どれもこれも皆「おにぎり」で「おむすび」ではない。日本中のそれを食べたわけではないが、商品としてとても「おむすび」は出来ないだろうと思う。
おむすびとは結びであって、ただ、にぎってかためたものとは違うのだ。だからおむすびは、両掌の中でくる、くるとまわして、御飯つぶがお互いにしっかり結び合うように「まわしにぎり」するものなのである。
御飯と御飯がしっかり結びあってはじめて、お米の ― 御飯の甘さ、おいしさが生まれてくるのだ。それを、手塩にかけ、食べる人に心を寄せかけてむすぶのである。これではじめて、心づくしのおむすびの味が生まれてくるのだ。
このおむすびにする御飯 ― お米を、藁で炊きあげたら、これこそ今日なら最高の贅沢になるのかもしれぬ。併し、昔は、これが普通だった。
ガスや電気で炊くのは便利に違いないが、それではほんもののお米の味は生きて来ない。一度機会があれば、藁炊きの御飯やおむすびを召し上がって、ほんとうのお米の味 ― ほんものの味を味わっていただきたいと思う。
藁と云えば、鰹のたたきも藁火であぶり焼きしないと、ほんとうのたたきの味はないという。
藁が身を燃やして、魚の不要な匂いをとってしまうのである。流石、藁はお米の母、身を焼いてまで役に立とうとしてくれる。人はそれを「藁の匂いつけ」というが ― 。
「町かどの藝能」は藁であり、藁炊きのおむすびである。一つ一つは小さいかもしれぬが、ほんものばかりである。いつか一度は味わっていただきたい。

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『このごろ』2

般若林の庭が色づきはじめました。DSC_0588
萩も黄色くなった葉をふさふさと延ばしています。
大きなカリンの木も黄葉し、時折り大きな黄色い実を落とします。うっかり木の下に車を置いているとボコンと屋根がへこみます。木の下に幾つか黄色い実がころがっています。とても香りがよく、ホワイト・リカーにつけると、喉にもよい美味しいカリン酒が出来ます。今は忙しいのと、とても実が固いので、作れずにいます。よろしければ塾へ来られてお持ち帰り下さったら、カリンの為にも嬉しいのですが ―― 。
山茶花も紅い花を沢山つけています。又、玄関脇の千両が、例年になく美しい赤い実をいっぱいつけています。白い小菊も咲いて、般若林はとても素敵なところです。
気候のせいか、楓の紅葉は未だですが、そのうちにあざやかに染め上がるでしょう。
種々と多忙な日々も、自然に一寸目をやるだけで、ほっと心が安らぎます。
十一月二十八まであとしばらく。ラスト・スパートの日々です。

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