『立春』


立春 ―― 。
素敵な響きです。
そう聞いただけで気分が明るくなります。
気候は未だ未だ去ったり来たりをくり返すでしょうが、でもすぐそこに春が来ているのです。

そんな自然の明るさに反して、塾には今、少し、ピリピリした空気が漂っています。
春の「小さな劇場」の台本の上がりが遅かったところへ、又とてもむづかしい(うちの人たちには)内容なのです。
題名は「おいたち」。お話そのものは易しいのですが、生活レベルがいささか違う人たちの人生です。
それを埋めるだけでも大変ですのに、そこへもって来て有難い「町かどの藝能」のお仕事が重なり、とに角、時間がもっともっと欲しい状態に焦立っています。
最もそれは指導陣だけで、俳優たちは案外「なるようになる」と思っているかも知れません。というと、「そんなことありません」と目に角を立てるでしょうが ―― 。

十一日には草藁生活行もあり、とに角、一分でも一秒でも、先に時間が延びてほしい思いです。

そんな時だけに、まわりの自然に一寸目を向けてみると ――

椿も水仙も咲いています。
桜の枝には春に向かって、新しい小さな芽がしっかりと太陽に向かっています。
去年の暮れにいただいた縁起ものの鉢植の紅梅は、今まさに満開、松の緑も生き生きと、笹に似た植栽の葉下には、赤い実がのぞいています。
驚いたことに梅雨に咲く紫陽花にも、新しい芽吹きがみられました。

私たちが気づかなくても、自然は立派に自分たちの生命を生きています。
目先のことばかりに追われている自分たちの小ささ ―― 。

しばらくぶりに、心が深呼吸してくれました。

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