月別アーカイブ: 2015年7月

『 やがて八月 』

七月の京都は祇園祭一色にぬりつぶされる。鉾町以外の方々にとってはかかわりない事だろうが、それでも街中が祭礼の雰囲気になるのは、これも又、伝統の力だろうか。

そして八月。子供たちにとっては何よりもうれしい夏休みである。甲子園では今年も又、高校球児たちの熱い戦いがくりひろげられ、沢山の涙と感動を日本中に与えてくれるだろう。
又、津軽平野のねぶた祭り、山形の花笠踊り、阿波踊りなど、各地で夏祭りが華やかにくり広げられる。
レジャーに祭りにと、日本中が浮きたつ季節である。
その同じ八月、七十年前に日本は敗戦の日を迎えた。八月六日広島に原爆投下、続いて九日には長崎に。双方の犠牲者は累算三十二万五千人、そして今尚その数はふえ続けている。
海外で散った生命は二百六十万人。国内でも五十万人を超える人たちが尊い生命をうばわれた。
勿論、この数が、全てではない。何らかの形で戦争の犠牲になった人たちの実数はもっと多いはずである。
そんな戦争がやっと終わった八月十五日。奇しくもその翌十六日、京都の五山に大文字の送り火が点される。お盆の十三日に迎えた祖先の霊が、迷うことなく冥界に戻られるようにと念う心の送り火である。
偶然にもせよ、終戦の翌日に点される大文字の送り火に、戦争で亡くなった人々の冥福を祈る方は今も少なくないはずである。

レジャーに湧き立ち、華やかな行事に彩られる八月だが、秘めやかな祈りの月でもあることを、今に生きる私たちは忘れてはなるまい。

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『 祇園さんの神威 』

十七日、奇跡的といっていい状況の中で山鉾巡行が行われました。他所では増水、氾濫、山崩れ ―― 痛ましい被害が相ついでおこっている最中に、京都は何と恵まれているのでしょう。
鉾町の方々なら「これこそが祇園さんの神威」と、胸を張っておっしゃるでしょう。
それにしても、ニュースを見乍ら感心していたのですが、「小雨決行・大雨強行」―― これが巡行の時の決まりごとだとか。「雨くらいへっちゃらですわ」―― おだやかな年配の男性のこの言葉に思わず笑いを誘われました。
降りしきる雨の中をずぶぬれで歩いてられる方、鉾を廻す方、舞われる方、全ての方の真剣さに、このお祭りにかけられる心意気が感じられ、普段とは又違った感慨をもって見守りました。
巡行から戻ればすぐ解体、巡行で集めた沢山の「汚れ」を他へ散らさない為、すぐにとりこわすのだとか。

祇園祭には、私たちの知らないことがまだまだあるようです。

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『祇園祭』

四条通りをはじめ辻々に鉾が立ち、祇園祭の気分が一気に高まっています。毎年巡行の日が晴れてくれるかどうか心配する時期ですが、今年はどうやら台風が来るのが確実らしく、沢山の方々の念いも通じないようです。
この日をめざして京都へ来られる沢山の方々、そして精魂傾けて巡行が無事執り行われるよう精進される鉾町の方々の為にも、晴れてほしいと京都人なら誰もが思うことでしょう。せめて二十四日の後祭りは、順調に行われてほしいと願います。
それにしても一ヶ月、丸々続くお祭りって、他所にもあるのでしょうか。本当に京都らしいというか、気の長い(なんていうと失礼ですが)、悠久の時の流れを越えて来た古都に相応しい、格式高いお祭りです。

ふと空を見ると、梅雨が上ったのかと思えるような、白い雲がむくむくと空高く伸び上っています。そうであったらいいのにと思いながら夕焼け近い空を眺めています。

般若林の庭は沢山の緑が、少しうっとうしいくらい枝葉を伸ばしています。
昔はこういう状況を、「散髪ぎらいの男の子のようだ」と表現したものです。今はそんな男の子はまあ見かけません。それだけみんな、おしゃれになったのでしょう。
紫陽花はすっかり力を無くし、変わって萩が「さあ、自分たちの季節」とばかりにふさふさと枝葉を揺らしています。チラホラ紅い花も見られ、間もなく一面にこぼれ咲いてくれるでしょう。
中庭の桜も楓も柿の木も、濃い緑で頭が重たげです。
大変なのは裏庭です。広場一面草が伸びて地面がほぼ見えないほどの茂り方です。雑草という草はないとはいえ、この草たちを何といえばいいのでしょう。中には子供の頃の遊び相手だった猫じゃらしも見られます。せっかく元気に育っている草たちですが、秋の公演までにはすっかり刈り取らなければなりません。とても人の手だけでは抜けず、毎年何度か草刈り機の助けを借りて、少しずつ整理し、最後は人の手で、公演当日には黒い土の庭になるようにするのです。
未だしばらくは草たちの天下、せいぜい元気に、自分たちの生命を生きていてほしいと思います。
それにしても終日野外劇というのは大変な労力を必要とする公演です。
「何故やるのか」、その意義を忘れては絶対にやれない厳しい公演です。始まった時の“志”を常に胸に抱き、日々公演に向かって歩みをすすめています。

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『可愛いお客さま』

つい先ごろ、塾に可愛いお客さまがありました。
宮崎県綾町 綾中学校の生徒さんです。
修学旅行の研究テーマに“京ことば”を選び、いろいろと調べた結果、KBS京都で京ことばの良さを伝える番組のあることを知り、局に連絡、プロデューサーに連れられて、その番組を担当していたおさだ塾へ来られたというわけです。
かなり前から連絡を受けていましたから、その日を楽しみにしていました。
思った通り、赤い頬っぺの可愛い少女たちでした。
十三才!! 青春の入口にさしかかったばかりの生命の輝き、若さのエネルギーに改めて感動した時間でした。
こちらの話すことを一言一句聞き逃すまいと懸命に耳を傾け、メモをとる指の動きの少したどたどしいのも若さのあかし、プロデューサーにうながされて質問する口調も何もかもが愛らしく、本当に楽しいひとときでした。
来年度から始まる「京ことば講座」は、おそらく経験豊かな人生の達人の方々が多い講座になると思います。十一月のプレ「京ことば講座」にどんな方々が来て下さるか、たのしみです。

相国寺様のお池の蓮が、今、次々と開いています。朝早くから蓮を楽しむ方々がよく来られるそうで、これからしばらくが見頃だと思います。お時間のある方、是非一度、御はこびになっては如何でしょう。どの蓮にも名前がついていて、それを見るのもたのしみの一つです。
白光、 黄玉、 巨椋の曙、 緑の里、 楚天祥雲、 八重茶椀蓮、 仏座蓮、 又「白君子」などという、女性に憧れられそうな名前の蓮もあります。「酔妃蓮」は楊貴妃の、帝を待つ淋しさをまぎらわせる美しい姿を連想させる名前です。
じっくりと見て廻られると、きっと心がやすらぐ楽しいひとときになると思います。

間もなく夏休み。大学に出講している三人も、これからはいっそう稽古に打ち込めるでしょう。
秋の公演が楽しみです。

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