草藁生活行


二月に入ると俄かに日の過ぎて行くのが早くなります。
二月は「逃げる」と昔からよく言われていましたが、やっぱり昔の人もそんなように感じたのでしょうか。
二月三日はお節分。そして翌日は早くも春が立ちます。
とはいえ、寒さは寒中にもまして厳しいのが常で、二月に降るみぞれは、冬の雪よりも尚、冷たさを感じさせます。
以前、お家の前に置かれたプランターのすみれやデージーの上にみぞれが降り積もり、寒さにふるえていましたのに、次の日、みぞれが溶けると降る前と変らず、元気にお日様の方を向いていました。
川や湖に張った氷が一番厚くなるのも二月とか。そういえば、雪祭りや氷の行事が一番多く行われるのも二月です。
寒い国の人たちが、ふと冬が見せた後姿に、春の近さを感じて、待つ喜びと冬への別れの心が、こうしたお祭りになったのでしょうか。

さて、いよいよ草藁生活行も間近になりました。
男性は上賀茂神社から、女性は川島織物の工場辺りを出発点に、それぞれ一寸した荷物を持って歩きます。
——昔の芸商人はこんなものを持っていたのじゃないだろうか。でも重いものを持っては歩けないしーー
現代人の塾生たちが、自分のひ弱さを改めて実感するときでもあります。でも出来る限り芸商人の心に近ずこうと、一人一人孤独の環境で、寒風
の中を歩きます。
貴船街道の一番奥にある「ひろ文」さんという料理旅館が終着点です。
温かいお風呂で汗や疲れを洗い流したあと、参加して下さった方や、友の会の方々へのもてなしとして、それぞれが一寸した課題や「芸」を見ていただきます。今年は落語か漫才なども有るようです。でも、なかなか褒められるようなことは出来ません。
本来この日は、今年一年がんばった人たちにいろいろな賞が贈られるのですが、ここ何年かは該当者なしで、とても残念な状況です。
おさだ塾の年度始めでもあり、全員が心を新たにする大切な日です。

そのあと、一年に一度の会食となります。
会食のあとは、稽古場に帰って春の公演の稽古をします。稽古のあがりが遅々として進まず、又々叱声が多くとぶことでしょう。
楽しくて、恐い一日です。

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