おさだ新聞

『 忙中の閑 』

お彼岸も過ぎたというのに未だ肌寒い日が ―― と思っていましたら、急に温かい日がやって来たり、いったいどうなっているのといいたい気温の変りようです。でも植物たちは確実に春を迎えています。椿の花も二輪咲きました。かつて月心寺さまの庵主さまからいただいた名椿です。紅と白の斑入りの大輪の花で、鉢に植えた方の小さな木などは花の重さが可哀想に思えるほど、沢山の花をつけます。一日一日、どんどん開花がすすむのが…
続きを読む

『今という時』

私どもの塾では、入門を希望する人に対して審査を行う。といっても落す為ではない。その人がどんな人なのかを知る為の審査である。 人間、一人一人顔が違うように、持っているものがみんな違う。知性も教養も学力も、人柄も情緒も肉体条件も生活環境もみんな違う。その違う一人一人に画一的な教育方法をとっても決して同じようには育たない。まずはその人がどんな人なのかをよく知って、はじめて、その人に適った教育方針が立てら…
続きを読む

「 鏡 」

我が塾にはたくさんの鏡がある。 全身が写せる大きな鏡から、顔だけが写る小さなのまで、さまざまである。稽古場は勿論、廊下を歩いていてもどこかに自分の姿が写っている。 こういうと、「なるほど、さすが劇団ですね」と人はおっしゃる。たしかにこれは、俳優たちが常に自分の姿を見て欠点を直すのに役立つ。が、本当は単に俳優だけの為ではないのである。 人は鏡を見る時、必ず心に何かを感じる。「あ、いやな顔してる」「つ…
続きを読む

「季の魚」

まぶしい初夏の日差しに銀鱗をきらめかせて、山間の清流に遊ぶ若鮎の姿。優雅でさえあるその姿は、美しい季節の風物詩である。 鮎は前年の冬、川で孵化するとすぐに海へ下る。そして冬を海で過し、翌春三・四月ごろ、水がぬるみはじめると待っていたように川を遡って来る。天敵や公害や、さまざまな障害にはばまれながら、それでも懸命に生まれ故郷の川へ還って来るのである。そしてふるさとの川で一夏を過し、秋、産卵を終えると…
続きを読む

『 鯉のぼり 』

五月に入りました。と、同時にゴールデンウイークに突入 ― 。京都の街は、以外と、自動車の数が少なく、静かです。 こゝ、般若林は自主稽古に来た塾生の「声出し」の稽古の声が聞こえるだけで、近隣の中学、高校は休みなので、あたりは静かです。 般若林の玄関の前に植えてある花菖蒲が四輪蕾を開きました。細い軸の先に、深い紫色の花が生きいきと咲いています。はなやかなさつきの花の色とはちがって、花菖蒲の紫は、しっと…
続きを読む

『 阿 吽 』

相国寺境内にある八幡宮に、時折りお参りする事がある。といっても、わざわざにではなく、通りすがりにといった方がふさわしい参り方である。 社殿の前にはお決まりの狛犬が二頭、「阿」と「吽」が向いあって座っている。阿は口を開け威嚇しているようだが、なんとなく愛嬌があってむしろ可愛らしい。吽は名のとうり、口をギュッと結んでこちらをじっとにらみつけている。如何にも「しっかり者」の感がある。眺めているうちに、ふ…
続きを読む

『京ことば』

日本は勿論、世界の多くの人々に愛され憧れられる京都。海外から訪れる方もどんどん多くなっているようだ古くから「旅の味の第一は その土地の言葉」だといわれるが、今の京都には美しい京ことばが聞ける場所がほとんど無い。こんな状態で「どうぞおいで下さい」といっていいのだろうか。 京ことばの元が「御所ことば」だということは誰もの知るところである。では、雲上人である公家や女房方(御所づとめの女性)の言葉が、どう…
続きを読む

『京都の山』

京都の北東にそびえる比叡山。そして北西には愛宕山。京都はこの二つの山に守られて、長く王城の地として栄えて来た。 比叡山の中腹に位置する延暦寺は天台宗の総本山であり、「行」と「教学」の修行道場として、今も篤い尊崇の念をあつめている。中でも千日回峰行は汎く知られるところであり、十二年の間、山を降りない籠山行や、教修生を育てる行と教学の実践の場でもある。 伝教大師最澄によって、法華・天台・密教などを融合…
続きを読む

『南天』

冬がれのさなかに、あざやかな赤い実をつけてくれる南天の木。 植物学的にいうとメギ科、ナンテン属の常緑低木。 驚いたことに、世界中でナンテン属というのはこの一種だけで、和名のナンテンがそのまま学名になっている。だから世界中どこでもナンテンで通るというのだ。正しくは「南天竺」、「南天燭」、「南天竹」などと書くが、「竺」は天竺(インド)から渡来した事を意味する。「燭」、「竹」は漢名で、「燭」は円錐状の花…
続きを読む

『ほんものの味を』

おにぎりやおむすびが今日商品になって街中で売られている。けれど、どれもこれも皆「おにぎり」で「おむすび」ではない。日本中のそれを食べたわけではないが、商品としてとても「おむすび」は出来ないだろうと思う。 おむすびとは結びであって、ただ、にぎってかためたものとは違うのだ。だからおむすびは、両掌の中でくる、くるとまわして、御飯つぶがお互いにしっかり結び合うように「まわしにぎり」するものなのである。 御…
続きを読む